ご案内
法は、金融商品取引契約の締結またはその勧誘に関して、業者またはその役職員が、虚偽の事実を告げたり、断定的判断を提供することを禁止しています(38条1号・2号)。
したがって、虚偽事実の告知・断定的判断の提供の禁止は、有価証券やデリバティブ商品の販売・勧誘だけでなく、投資顧問契約や投資一任契約の締結にも適用されます。
虚偽事実の告知・断定的判断の提供の禁止は、業者とプロ投資家の間にも適用されます。
これらの行為により歪められたプロ投資家の投資判断が市場に到達すると、市場における価格形成の公正が害されると考えられたからです。
断定的判断の提供は、さらに二つの帰結をもたらします。
断定的判断を提供された顧客(事業として契約を締結するのでない個人に限る)が、判断の内容が確実であると誤認して契約を締結した場合には、顧客は消費者契約法に基づいて、契約を取り消すことができます。
虚偽の事実を告げ、または断定的判断を提供した業者は、金融商品販売法に基づいて、それによって顧客が被った損害を賠償する責任を負うこととされました(金融商品販売法4条5条、プロ投資家にも適用)。
この場合にも、元本欠損額は顧客の被った損害と推定され、業者の責任は無過失責任です。
不招請勧誘とは、勧誘を要請しない者に対する電話、訪問などの方法による勧誘をいい、イギリスでは、価格変動の激しい商品について不招請勧誘が禁止されています。
日本では、外国為替証拠金取引による消費者被害が社会問題化したことを契機として、平成17年に、外国為替証拠金取引に金融先物取引法の規制を及ぼすとともに、同法に不招請勧誘の禁止を定めました。
金融商品取引法は、金融先物取引法から不招請勧誘の禁止を引き継いでいます。
すなわち、金融商品取引業者等またはその役職員は、金融商品取引契約の締結の勧誘を要請していない顧客に対し、訪問し、または電話をかけて勧誘する行為を禁止されます(38条3号)。
ただし、禁止規定は政令で定める契約に限って適用されることとなっており、政令では取引所外で行われる金融先物取引に限定する予定です。
再勧誘の禁止とは、最初の勧誘がいかなる方法によるものであれ、顧客が契約の締結をいったん拒んだ後は、同じ契約の勧誘を継続することを禁止するものです。
特定商取引に関する法律(特定商取引法)は、政令指定商品の電話勧誘販売について、再勧誘の禁止規定を置いていますが(特定商取引法17条)、政令指定商品には、いわゆる金融商品は含まれていません。
金融商品取引法では、勧誘を受けた金融商品取引契約を締結しない旨、または当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨を顧客が表明した場合には、当該勧誘を継続することを禁止しました。
再勧誘禁止の前提として、勧誘に先立って勧誘を受ける意思の有無を顧客に確認する必要があります(同条4曼。
再勧誘の禁止規定も政令で定める契約に限って適用され、政令では、取引所で行われる金融先物取引を指定する予定です。
不招請勧誘・再勧誘の禁止は、プロ投資家には適用されません。
虚偽事実の告知や断定的判断の提供は、それ自体投資家の判断を歪める危険性をもつ行為であり、勧誘に際してあってはならないことですが、不招請勧誘・再勧誘は行為の性質自体が不当であるとはいえません。
不招請勧誘・再勧誘を禁止する根拠は、プライバシーの保護や投資の自己決定権に求められることがあり、リスクがとくに高いこと、現実に被害が生じていることを理由に禁止の範囲を広げるべきだとの意見もあります。
他方、不招請勧誘・再勧誘が禁止されると、それだけ投資家に商品内容を知らせる機会が減るため、投資家は自分に適した投資をするチャンスを逃すとも指摘されています。
このように、どの範囲で不招請勧誘・再勧誘を禁止するかは、禁止の根拠、禁止の効果等をよく吟味して検討しなければならない難しい問題です。
契約締結後の一定期間(クーリングオフ期間)、顧客が無条件で契約を解除することができれば、不当な勧誘によって損失を被るのを防止することができます。
多くの消費者契約では、法律上または契約上、無条件の契約解除権が認められています。
証券取引の分野では、投資顧問契約の締結について10日間のクーリングオフ期間が設けられていました(投資顧開業法17条)。
ところが、有価証券の売買やデリバティブ取引では、取引対象の価格が常に変動しますので、クーリングオフを認めると、取引後に価格が下落したときに契約解除権を行使するなど顧客の投機行為を許すことになります。
金融商品取引法は、政令で定める金融商品取引契約に限って顧客に無条件の契約解除権を認めることにしていますが(37条の6)、政令指定の範囲は投資顧問契約など相当限定されたものになるでしょう。
損失補填とは、顧客が証券取引によって被った損失を証券会社が穴埋めすることをいいます。
バブル崩壊後の平成3年に、大手証券会社を含む多くの証券会社が、大口顧客に対して多額の損失補填をしていたことが発覚し、大きな社会問題になりました。
損失補填が証券取引の自己責任の原則に反すること、および一部の大口顧客だけが有利な扱いを受けていたことが一般投資家の証券業に対する信頼を破壊するものとして強く非難され、同年の証券取引法改正により、損失補填は罰則をもって禁止されました。
金融商品取引法は、損失補填の禁止をすべての金融商品取引業者に及ぼしています。
金融商品取引業者等が具体的に禁止されるのは、有価証券の売買その他の取引またはデリバティブ取引に関する次の行為です(39条1項)。
バティブ取引によって顧客に損失が生じることとなり、またはあらかじめ定めた利益が生じないこととなった場合に、損失を補填し、または利益分を上乗せするために、当該顧客または第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客またはその指定した者に対し、業者が申込み、または約束し、あるいは第三者に申し込ませ、または約束させる行為のことです。
申込みも禁止されますので、業者側から申込みをした場合は、たとえ約束が成立しなかった場合にも処罰されます。
第三者から申し込ませる行為も禁止されますので、たとえば顧客が業者から購入した有価証券について決算期に評価損が生じそうになった場合に、第三者から当該有価証券を買い取る旨を申し込む行為(いわゆる「飛ばし」)も、損失補填の約束に当たると解されています。
対して、損失補填・利益追加の目的で財産上の利益を提供する行為です。
事前の約束がない、または立証できなくても、財産上の利益の提供がなされれば、それのみで法違反となります。
ただし、業者の違法な勧誘によって顧客が被った損害を業者が賠償する行為は、内閣総理大臣の確認を受けるか、損害賠償判決や和解手続を経ることによって、適法にすることができます。
金融商品取引業者側の罰則は、違反行為者が3年以下の懲役、300万円以下の罰金、またはその両方(198条の3)、法人が3億円以下の罰金です(2074)。
この罰の重さは、平成3年の制定当時は相場操縦とインサイダー取引の中間だったのですが、今回の改正でインサイダー取引が重罰化されたのに対し損失補填の罪は重罰化されなかったために、インサイダー取引よりも軽い刑罰になっています。
顧客が損失補填を要求し約束が成立した場合や、顧客が要求した損失補填が実行された場合に処せられ、顧客が得た財産上の利益は没収されます(200条の2)。
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